日本では時折、金融庁などの役所からの公式発表より先に、メディアが報道を行うことがあります。これは、日本特有の”記者クラブ”と公的機関の関係や、行政施策が決定される過程での”隠れた意図”の存在等によって行われることもあります。
本稿では、筆者が30年にわたる霞が関生活で培った経験から、繰り返されるスクープやエンバーゴの裏側、官公庁の傾向を紹介。それらをもとに、今後考えられる税金に関する法改正や、国税庁の考える仮想通貨の税区分の決定経緯などを報道や資金決済法などから分析し解説を行いました。



- 1 日本の報道体質
- 1.1 財務省を担当する日本特有の”記者クラブ”
- 1.2 記者クラブと公的機関の”お作法”
- 1.2.1 エンバーゴと情報の正確性
- 1.2.2 公的機関のメリットとインセンティブ
- 1.3 メディアが報じる”スクープ”のからくり
- 1.3.1 誤解と先走り
- 1.3.2 リークの”意図的な使用”
- 2 仮想通貨取引に関する税法上の所得区分
- 2.1 雑所得の定義
- 2.2 資金決済法での”仮想通貨の資産定義”
- 2.3 所得区分を巡る経緯
- 2.3.1 仮想通貨の税区分に対する疑問
- 2.3.2 税金上のビットコイン現物とbitFlyer FXの”区別”
- 3 大久保参議院議員の質問主意書
- 4 結論と考察
日本の報道体質
若干、古いニュースになりますが、「仮想通貨規制の移行を検討 改正資金決済法から金商法へ 利用者保護を強化」という記事が産経ニュースから配信されました(2018.7.3 05:00)。一方で、仮想通貨WATCHというサイトで(高橋ピョン太による署名記事)、このような事実はないと金融庁が回答したと報じられたほか、産経の報道を独自取材によって追いかけた報道はありません。
まさに事実は闇の中という状況ですが、ここでは、これが事実かどうかという問題はさておき、官公庁の広報がどのような形で行われているのか、その中で行政施策がどのような形で決まっていくのかを見てみましょう。
財務省を担当する日本特有の”記者クラブ”
日本の報道体制というのはよく知られており、皆さんご存知かもしれませんが、中央省庁関係のニュースは所管省庁の記者クラブを通じて配信されるのが通例となっています。金融関係のニュースでは「財研(財政研究会)」と呼ばれている財務省などを担当する、主としてメディア各社の経済部に属する記者が集まっている記者クラブが担当しています。
*余談ですが、一般紙(全国5紙、テレビ、通信社等)と専門誌とでは、あまり仲がよくないようで、別の組織を作っているところが多いようです。
この記者クラブという制度は、