イーサリアム高騰により、イーサリアムマイニングの収益性に注目が集まっています。一方でイーサリアムマイニングは専門の知識が必要であり、収益性やマイニング損益分岐点、GPUマイニングリグやASICなどを理解しておかなければなりません。
本稿ではイーサリアムマイニングを法人経営してきた墨汁うまいが、マイニングが儲かるか儲からないかを判断するためのマイニングの基礎知識と、イーサリアムマイニングの今後について具体例を用いて詳しく解説を行います。
- 1 そもそもマイニングとは?
- 2 イーサリアムマイニングプール
- 3 ハッシュレートとは?
- 3.1 イーサリアムASIC
- 3.2 GPUマイニングリグ
- 4 マイニング効率を計算する
- 5 マイニングのランニングコスト
- 6 日本におけるマイニングの落とし穴
- 7 マイニングの損益分岐点
- 8 GPUマイニングの注意点
- 9 マイニング初期コストをいつ回収できるのか?
- 9.1 イーサリアムASICの初期コスト回収期間
- 9.2 GPUマイニング時の注意点
- 9.3 GPUマイニングリグの初期コスト回収期間
- 10 マイニングの問題点
- 11 マイニングプールの選び方
- 12 マイニングプールの手数料と注意点
- 13 墨汁うまいがマイニングを撤退した理由
- 14 マイニング収益の維持
- 15 イーサリアムのブロックサイズとスケーリング
- 16 EIP-1559イーサリアム手数料モデルの変更
- 17 イーサリアム2.0への移行
イーサリアムマイニングの課税計算については税金講座「仮想通貨の確定申告or決算完全ガイド ~マイニング+基礎編~」にてマイニングプールの手数料など詳しく解説をしているので参照してください。
そもそもマイニングとは?
そもそもマイニングとはどういうものかを先に理解しておきましょう。マイニングとはビットコインに代表されるようなブロックチェーンのコンセンサスアルゴリズムの”Proof of Work”で使用される専用用語で、演算能力をネットワークに提供し、その”仕事の対価”として新規発行されるネイティブ通貨を報酬として受け取る行為を表します。
イーサリアムでは現時点でビットコインと同様にProof of Work(以下PoWとする)を採用しており、イーサリアム独自のPoWであるEthashを現時点では使用しています。このEthashはイーサリアムローンチ時から使用されていますが、ステーキングを前提とするPoSへの移行がローンチ前から決定しており、いずれマイニングができなくなることを大前提にマイナーはマイニングを行います。
イーサリアムマイニングプール
イーサリアムマイナーはNvidiaのGTX1060やAMDのRX580などの並列演算を得意とするGPUを使用し、マイニングを行います。PoWにおいて、マイニングの報酬を得られるのは基本的にブロックを生成した単一のマイナー(イーサリアムはアンクル報酬という別報酬がある)だけであり、演算速度を総当りで競っています。
故に”イーサリアムマイナー”としてネットワークに参加する場合、より高い演算力を持つマイナーがブロックを生成できる確率が高く、個人で数千万円マイニングに投入したとしても、マイニング報酬を得ることができません。
これらの個人で高い演算力を持つマイナーを”ソロマイナー”といい、小口のマイナーはお互いに演算力を持ち寄る”マイニングプール”へと参加します。マイニングプールでは例えば100ETHを1日でマイニングできた場合、自身の演算力が1%を締めている場合に100ETHの1%の報酬、つまり1ETHを分配して報酬と得ることができるのです。
例えば下記グラフでは過去1週間のブロックを生成したマイナーの割合が表されており、1位はSpark Poolが24.8%、2位がEthermineで20.1%、3位がF2Poolで10.7%となっていることがわかります。これらは個人マイナーではなく、Spark Poolに多くのマイナーが演算力を持ち寄っており、ソロマイナーは2%以下の確率でしかマイニングできていないことがわかるでしょう。
出典:Etherscan – TOP25イーサリアムマイナー
ハッシュレートとは?
マイニングを行う演算力を”ハッシュレート”と呼びます。このハッシュレートは1秒間にハッシュ計算(暗号計算)をどれだけ行うことができるかを示す用語であり、マイナーはこのハッシュレートをマイニングプールに持ち寄って、報酬をハッシュレートに応じて得ることができます。
イーサリアムASIC
イーサリアムマイニングにおいて、ハッシュレートを高くするには大量のGPUまたはETHマイニングに特化した専用マイニング機器であるASICを必要とします。2019年まではイーサリアムのマイニングはGPUが主体でしたが、現在はInnosiliconなどからマイニング効率の良いASICが発売されています。
ですがイーサリアムASICはマイニング効率がいいものの、高いという傾向があります。例えばInnosilicon A10 Pro ETH Minerは非常にマイニング効率が高いものの、価格は1台4388ドル日本円にして約46.1万円となっており、手軽にイーサリアムマイニングを開始できる初期コストではないと言えるでしょう。
出典:Innosilicon – イーサリアムASIC A10 Pro ETH Miner
GPUマイニングリグ
対して一般投資家がイーサリアムマイニングを開始する場合、コストに応じて気軽にマイニングするにはGPUが最適です。GPUでマイニングを行うPCを”マイニングリグ”と呼び、自作PCの延長上のようなものと考えるとわかりやすいでしょう。
ハッシュレートを上げるには単純にマザーボード(以下M/B)に接続するGPU数を多くすることでより高いマイニング報酬を得ることができます。一方でInnosiliconの A10 Pro ETH Minerと比較すると、大幅にマイニング効率が落ちてしまいます。
マイニング効率を計算する
まずマイニングが儲かるかどうかを判断するには