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真のイーサリアムキラーは”イーサリアム2.0(セレニティ)”

コンテンツの概要
文字数 : 約15,000文字
ページ数 : 約41ページ

イーサリアムは、スマートコントラクトベースのブロックチェーンの成功例として、しばし「○○○はイーサリアムを超える」という比喩をされます。ですが実際は、イーサリアムを真似しただけのものや、そもそもイーサリアムのような非中央集権に分散したネットワークを構築しないことで、中央集権なノードによりブロック伝達率問題にスケーリングしているものです。
イーサリアムを殺す”真のイーサリアムキラー”はイーサリアム2.0です。現在のイーサリアムを1.0のベースバージョンとすると、イーサリアム2.0はまさにその数字が表すように現在のイーサリアム1.0(メトロポリス)とは180度違い巨大なエコシステムを一新するものとなるでしょう。
本稿では、”セレニティ”通称イーサリアム2.0のロードマップをベースに、イーサリアム2.0がいかにしてイーサリアムネットワーク自体の処理能力を加速度的に増加させることができるかを詳しく解説。Beacon ChainやSharding、RANDAOや乱数問題、ブロックチェーンがスケーリングする際の”トリレンマ問題”などイーサリアム2.0の概要に幅広く触れています。

コンテンツの主題
ETH経済
価格影響
開発
目次
  • 1 イーサリアム2.0(セレニティ)
    • 1.1 イーサリアム 1.xとイーサリアム2.0の関係性
    • 1.2 セレニティの開発ロードマップ
  • 2 Beacon ChainとCasper
    • 2.1 Ethereum 1.0上のBeacon Chainコントラクト
    • 2.2 イーサリアム2.0とイーサリアム1.xの関係
  • 3 乱数とイーサリアム
    • 3.1 疑似乱数と非乱数性
      • 3.1.1 線形合同法
      • 3.1.2 メルセンヌ・ツイスタ
    • 3.2 Oraclizeの問題点
    • 3.3 RANDAOベースのRNGと仕組み
      • 3.3.1 RANDAOの仕組み
      • 3.3.2 Beacon Chainで求める乱数とRANDAOの問題
      • 3.3.3 VDFとは(Verifiable Delay Functions)
  • 4 Shardingとは?
    • 4.1 スケーリングが困難なブロックチェーンでスケールする方法
      • 4.1.1 諦めてアルトコインを使用する
      • 4.1.2 ブロックサイズを上げる
      • 4.1.3 マージマイニング(Merged Mining)
    • 4.2 ブロックチェーンをスケールする際の”トリレンマ”
  • 5 オフチェーンによるスケーリングはイーサリアムには適さない
    • 5.1 ステートデータとブロックチェーンデータ
      • 5.1.1 フルノードとライトノード
      • 5.1.2 スパム攻撃や利用で増えるステートデータ
    • 5.2 フェイズ4 Cross Shardトランザクションとは?
      • 5.2.1 Cross Shardの低速送金問題
      • 5.2.2 ReceiptとMerkle Proof
      • 5.2.3 アカウントコントラクトへ実装する”Encumberment”
  • 6 イーサリアム”ワールドコンピュータ”の完成形
  • 7 スケーリングの頂点”指数関数的Shard”
  • 8 結論と考察
    • 8.1 Shardingの実装に時間がかかる理由
    • 8.2 ETH2.0へのアプローチと価格影響
    • 8.3 バリデータに関する仕様と32ETHにした理由

本稿は主にイーサリアム2.0の基礎的構造を解説しており、各項目に関する詳しい解説は下記マガジンにて日々更新しています。

 

イーサリアム2.0(セレニティ)

イーサリアム2.0に対し、デベロッパーカンファレンスのDEVCON4で秘密裏に行われた会議で発覚したイーサリアム 1.xというコードネームも存在します。これはイーサリアム2.0で実装予定であったeWASMを中心とし、即座に解決する必要のあるイーサリアムのコントラクトや様々な状態を記録したフルアーカイブノードの容量問題を解決するState Rent。ブロックデータをノードが保有するのではなく、非中央集権ストレージのSwarmやIPFSに保存するなどの主要機能を置き換え、新しいエコノミックモデルを実装しイーサリアム2.0への移行をよりスムーズに行うネットワークのトランジションです。

 

イーサリアム 1.xとイーサリアム2.0の関係性

イーサリアムはその巨大エコシステムを活かし、 Proof of StakeやSharding(後ほど詳しく解説)、eWASMの独自のリサーチチームやデベロッパーが存在します。つまり現在のメトロポリス開発とは別にイーサリアム1.xの各ワーキンググループ、イーサリアムの生みの親Vitalik氏率いるCasperチーム、Shardingチームが存在。

 

Ethereum 1.0→コンスタンティノープル(現在)

Ethereum 1.x→2019年内予定

Ethereum 2.0→セレニティ(イーサリアムの完成版)

 

と3つの大きな枠組みで並行にリサーチ、開発を行なっています。つまり、順を追って開発リサーチするのではなく将来的に実装を行うものをリアルタイムで行なっているため、常にブロックチェーンの一歩先を進んでいると言えるでしょう。

 

セレニティの開発ロードマップ

イーサリアム2.0は壮大な実装計画であるので、ロードマップがフェイズごとにわけられています。

 

フェイズ0:PoS Beacon Chain実装

フェイズ1:Sharding実装

フェイズ2:Shard ChainにEVM実装

フェイズ3:ライトクライアント(State Rent)

フェイズ4:Cross Shardトランザクション

フェイズ5:PoWチェーンとの密結合

フェイズ6:超二次関数的Shard

 

順を追って見ていきましょう。

 

Beacon ChainとCasper

イーサリアム2.0のメインとも言える改良は、PoSの導入です。Beacon ChainとはETHをステーキングしたヴァリデータのレジストリと登録、管理を行うシステムチェーンです。下記図はBeacon ChainとSharding Chainの略図ですが、フェイズ0ではまずBeacon Chainの導入から行われます。

 

出典:https://media.consensys.net/state-of-ethereum-protocol-2-the-beacon-chain-c6b6a9a69129

 

Ethereum 1.0上のBeacon Chainコントラクト

よく勘違いされていますが、イーサリアムの開発ロードマップとしては、PoW→PoSへの直接の移行ではなく、PoWとPoSのハイブリッドを経由してからとなります。Beacon ChainはETHをデポジットするPoSチェーンですが、現在のマイナーがブロックを生成しているイーサリアムのメインチェーンとは別の“レイヤー“となります。

これはサイドチェーンやオフチェーンのように、基のブロックチェーンをベースレイヤーとし、Beacon ChainはヴァリデータのETHデポジット(現時点では32ETH)を管理し、不正やチェーンの攻撃を行おうとするヴァリデータのデポジットを没収するいわば司令塔のようなシステムチェーンレイヤーです。

 

ETH2.0の初期段階であるPhase0の段階では、Beacon Chainのみで、ベースレイヤーのPoWチェーンはCasperへと移行をしません。

つまり、Beacon Chainの導入はイーサリアム上のコントラクトで行われるため、コンセンサスアルゴリズムを変更する必要がないのです。従って、

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