- 1 NightfallはProduction Readyではなく、開発実装促進
- 2 イーサリアム上でのプライバシー需要
- 3 完全匿名=追跡不可ではない
- 4 まとめ
ゼロ知識証明を利用した、イーサリアム上での匿名送金の実装は世界4大会計事務所のEYにより2018年10月にすでに発表されていたものの、2019年6月1日に”Nightfall”と名付けられたZcashのzk-SNARKsを使用したERC20とERC721トークンの匿名送金が可能なプロトコルをGithub上で公開。Nightfall自体は”完全に匿名”を可能にするものであり、これはイーサリアムネットワークにとって非常に重要なものとなります。その一方AMLなどの観点から批判的な意見も少なからず見られますが、”匿名”というのはZcashのSaplingでも紹介したように、落とし穴があり、理解されていない傾向にあります。
本稿ではNightfallの影響と、匿名送金がなぜイーサリアムで重要か、匿名の理解されていない落とし穴について解説を行います。
NightfallはProduction Readyではなく、開発実装促進
EYがNightfallをGithub上で公開したものの、Production Ready状態ではないため、ブロックチェーン上で横行しているリサーチやテストを十分に行わずにコピーして実装するということができません。EYのブロックチェーンチームの目的として、エンタープライズグレードを目指し、企業導入を促進するための開発を行っているプロジェクトなどの独自アイデアや実装の参考にし、開発促進を願うとしています。
そのため、EYはプロダクションへの実装(メインネットなど)や、資産価値のついているイーサリアムベースのトークンを送金したりすることを推奨していません。ですが、オープンソース開発における、技術革新として非常に素晴らしいやり方であるといえ、ゼロ知識証明のような難しい暗号学の実装やリサーチを行うデベロッパーにとって、非常に有益な情報となるでしょう。
出典:https://github.com/EYBlockchain/nightfall
イーサリアム上でのプライバシー需要
ブロックチェーンにおけるパブリックの意味とはなんでしょう?誰でも閲覧でき、残高を確認できることが「透明性を高めること」というのは、間違いです。これはブロックサイズを上げることでスケーリングができるという主張と同様であり、複数のインセンティブが相互に作用することでエコシステムを構成できるブロックチェーンにおいても社会全般のことにおいても一つの側面だけを見て評価することは間違っています。
例えば、AMLの観点から匿名に特化した送金は問題かというとそうではありません。切れ味の鋭い包丁となまくら包丁どちらでも使い方で人を傷つけることができ、その使い方次第でしょう。また、銀行の送金はパブリックには公開されておらず、現金で取り扱えばオンチェーン上の履歴から見ても同様であり、これらの指摘はお門違いであると言えるでしょう。では、これらのことを考慮し視野を広げてみていきましょう。まず、前提にトラストレスなコントラクトについて考えます。
まず、イーサリアムを企業が使用することを考慮するとどうでしょう?トラストレスを前提に考えれば、レガシィチェーン上の