Enjinプラットフォームは、“ゲームのマルチバース”という新たなエコシステムを構築するイーサリアムベースのプロジェクトです。本稿では、イーサリアムのハイブリッド活用ゲームプラットフォームEnjinとENJコイン、ERC1155について解説を行います。
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Enjin(ENJ)とは?
Enjin($ENJ)はシンガポールを拠点とするスタートアップであり、2009年にCEOのMaxim Blagov氏とCTOのWitek Radomsk氏によって設立。ゲームプラットフォームである”Enjin Network”を開発し、総ユーザー数は2000万人を超えています。
ブロックチェーン事業への参入は2017年8月で、イーサリアム上でICOを行い約24.3億円の資金調達、さらに2019年10月にシリーズAラウンドでも同様に資金調達を行っています。またEnjinは「Enjin ウォレット」というイーサリアムやERC20, ERC721, ERC1155トークン、ライトコインやビットコインに幅広く対応した仮想通貨ウォレットアプリも提供しています。
Enjinのトークンである$ENJはBinanceやBittrex、Bitfinexに上場しており、DeFiの中核であるDEXのUniswapやRadar Relay、Kyber Networkなどでも取引が可能です。
$ENJ概要
Etherscanによるとトークンの概要は2020年8月現在下記のようになっています。
発行数:10億ENJ
所有:59,490アドレス
時価総額:187億円
ゲームでENJ使用する利点
EnjinはNon-Fungible Token(NFT)、つまりERC20トークンのような一様の価値を持つのではなく一つ一つのトークンが異なる価値を持つNFTをゲームで使用できるEmjin プラットフォームを提供しています。ゲーム会社はブロックチェーンの知識を必要とせずに、Enjin プラットフォーム上でNFTを使用することができるのです。
Enjinプラットフォームでは、オフチェーンとイーサリアムオンチェーンのハイブリッド形式でゲームアイテムのスワップを提供しています。まずユーザーの合意によりイーサリアム上でトランザクションが生成された後、EnjinウォレットはAPIを呼び出してそのトランザクションを監視します。この時オンチェーン処理のみであれば、ユーザーはトランザクションがブロックに取り込まれるまで時間を有しますが、このAPIによりゲーム側では代理アイテムまたは売却ができない仕様のアイテムを即座に反映するのです。
そしてトランザクションが特定数の確認ができたところで、所有権が完全に移ったことになります。例えばゲーム内通貨である場合、即座に残高は反映されますが一時的に送金できない形式となります。この方式によりReorgやガス代高騰の遅延などの影響に対策を行っているのです。
またEnjinプラットフォームでは個別のカスタムトークンを発行することができ、その際に$ENJを保管します。したがってカスタムトークンの価値は$ENJに裏付けされており、例えゲームサービスが終了してもそのアイテムは無価値にはならないのです。さらにEnjin ウォレットではこのカスタムコインと$ENJとの売買インターフェイスを提供しているため、個別上場などの不確定なものではないという利点もあります。
スマートフォンの普及によりゲームはより身近な存在となっている一方、例え長く時間をかけて入手したレアアイテムであったとしても、サービス終了で無価値となってしまいます。対してEnjinベースのゲームであればゲーム内で資産形成を行うことができ、かつ購入することも可能となるということです。またすべてのアイテムは別のゲームであっても、その価値を別のゲームに移転できるという利点を持つというメリットは、ゲームにおける革命とも言えるでしょう。
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ERC1155スタンダードの利点
ERCスタンダードとはEthereum Request for Commentsの略であり、イーサリアム上でトークンを発行数する際の基準のことを指します。一番メジャーなのはICOやガバナンストークンとして用いられるERC20トークンであり、送金などの標準的機能を定義しています。対してERC-721ではNFTを発行する際のスタンダードで、ERC1155も同様となっています。
ERC721の問題
ですがERC20、ERC721スタンダードを使用する際、異なるトークンごとに異なるコントラクトが必要となってしまいます。例えば100種類の異なるトークンを発行するには100個のコントラクトデプロイが必要となり、コントラクト生成時に必要なETH数も100倍となってしまうのです。
ERC1155が変えるイーサリアム上のNFT
対してERC1155はマルチトークンスタンダードであるため、1つのコントラクトで各IDを持ったトークンコントラクトを発行できるという利点を持ちます。
Enjinの目的は異なるゲーム間での資産リザーブであるため、この複数のERC-721トークンコントラクトをデプロイしなければならないという問題を、ERC1155で解決しているのです。
分析と考察
Enjinはイーサリアムの不変性と安定性を活用したゲーム資産のリザーブが可能なプロジェクトである事がわかりました。Enjinプラットフォームを活用することで、異なるゲーム間でも資産を引き継ぐ事ができ、これをEnjinは”マルチバース“と呼んでいます。
ゲームはオフチェーンでスケーリングし、資産価値をイーサリアムで裏付け、さらにこれまでにないゲームのマルチバースを可能にするという非常に面白い仕組みとなっています。
スマートフォンの普及率は世界中で非常に高く、今後多くのソーシャルゲームがEnjinを取り入れる事で、ゲーム業界に革命を起こす可能性を秘めていると言えるでしょう。Enjinが気になる方は公式ツイッターをフォローしてみるといいでしょう。
Sponsored by Enjin Pte Ltd