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墨汁マガジンVol.1107「Justin SunのTUSDの裏付け不足事件から見るステーブルコインのリスク」

目次
  • 1 TUSDの発行裏付けが約682億円分足りず、Jusitn Sunが密かに補填
  • 2 TUSD裏付けは事実上の損失へ
  • 3 TUSDから見るステーブルコインの問題点
  • 4 流動性と償還
  • 5 TUSDの問題点
  • 6 マイナーステーブルコインのリスク
  • 7 まとめ

仮想通貨(暗号資産)のTronのCEOであるJusitn Sunが買収したステーブルコインのTUSD(True USD)が発行裏付けである約682億円相当のドルがトラブルによって事実上の損失として残高試算表に穴があったことがリークされ、ステーブルコインリスクが再度浮き彫りとなっています。

本稿ではTUSDの裏付けトラブルから見るテザー社のUSDTなどのステーブルコインリスクについて仮想通貨(暗号資産)投資家向けにわかりやすく解説を行います。

ステーブルコインビジネスの概要については墨汁マガジンVol.1106「USDCのCircleはなぜIPOをどうしても行いたかったのか?ステーブルコインビジネスを理解する」を参照してください。

 

TUSDの発行裏付けが約682億円分足りず、Jusitn Sunが密かに補填

香港裁判所の資料によると、2020年12月にTUSDを発行するTrueUSDを買収したTechteryx社がTUSDの裏付けとして不足していた約682億円相当のドルを損失としてJusitn Sunが補填していたことが判明しました。

このトラブルの大元はTUSDの発行元となるJustin SunのTechteryx社がTUSDの裏付けドルを保管するカストディ先として「First Digital Trust (FDT)」を任命、このFDTが今回損失となった約682億円を不正にドバイの「Aria Commodities DMCC」に送金していたことが理由とされているのです。

 

 

TUSD裏付けは事実上の損失へ

この約682億円相当のドル裏付けはTUSDの本来の価値をドルに対して1:1にするための一番重要な部分であり、顧客のTUSDからドルへの償還に対応するためになんらかの流動性資産である必要があります。

香港裁判所によるとこのFDTは約682億円をAria Commodities DMCCに送金後、非流動性資産、つまり売却も現金化もできない状態で資金を使用しており、市場整備のための費用だったとしているのです。対してJusitn Sunは「詐欺だった」として法的にFDTを訴訟、この損失をTUSDの信頼を失わないために密かに補填していたことがリークされ今回の問題が判明したことになるのです。

 

TUSDから見るステーブルコインの問題点

Justin Sunはあくまでこの件において被害者だとしていますが、ここにステーブルコインビジネスの問題点とリスクが浮き彫りになるいい例だと言えるでしょう。

ステーブルコインビジネスの概要でみたように、

 

「ステーブルコイン

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