イーサリアムL2のOrbiter Financeとは次世代Cross-Rollupを提供するブリッジプロジェクトを指す。従来のHop ExchangeやCellarのcBrdige、Multichain(元Anyswap)のようなAMM型の流動性をベースとしたブリッジと異なり、保証金型のインセンティブとペナルティによるEOAアカウントを介した新たなモデルを採用しているという特徴を持つ。
Orbiter Financeの仕組み
Orbiter FinanceではCross-Rollupを提供するノードの”Maker”がEOAアカウントをベースにしているため、非常にブリッジが早いという大きな利点を持つ。仕組みとしてはMDCがMakerの保証金を預かり、EBCやSPVCなどのコントラクトで独自の検証可能なネットワークを構築することでシームレスにCross-Rollupブリッジを可能としている。
Orbiter Finance対応のRollup一覧
Orbiter FinanceではCross-Rollupだけでなく、イーサリアムL1やEVM経済圏、Validium(StarkEx)などにも対応しており、2025年1月現在ブリッジ対応は68チェーンにも上る
チェーン名チェーン種類サブカテゴリガス
EthereumL1EVMETH
Arbitrum OneL2Optimistic RollupETH
OptimismL2Optimistic RollupETH
BaseOP StackイーサリアムL2ETH
BlastOP StackイーサリアムL2ETH
MantleOP StackOptimiumMNT
FraxtalOP StackOptimiumETH
World ChainOP StackイーサリアムL2ETH
TaikoOP StackイーサリアムL2ETH
opBNBOP StackBNB
ZoraOP StackイーサリアムL2ETH
InkOP StackイーサリアムL2ETH
LiskOP StackイーサリアムL2ETH
ModeOP StackイーサリアムL2ETH
MantaOP StackETH
UnichainOP StackイーサリアムL2ETH
Arbitrum NovaArbitrum OrbitイーサリアムL2ETH
ApeChainArbitrum OrbitイーサリアムL2APE
zkSync ErazkEVMzk-RollupETH
LineazkEVMzk-RollupETH
ScrollzkEVMzk-RollupETH
Polygon zkEVMzkEVMzk-RollupETH
BNBEVMチェーンBNB
Polygon PoSEVMチェーンMATIC
SonicEVMチェーン元FantomS
ZetaChainEVMチェーンZETA
CoreEVMチェーンCORE
SophonZK StackValidiumSOPH
X LayerPolygon CDKzkEVMOKB
SolanaSVML1SOL
EclipseSVMイーサリアムL2ETH
SuiMOVEチェーンL1SUI
StarknetCarioVMzk-RollupETH
ZircuitAVSEigenLayerETH
過去にはdYdXやMetis、Bobaなどにも対応していたが、現在は使用することができない。
OBTトークンのエアドロップ
Orbiter Financeは2024年12月にポイントプログラムとなるOポイントをローンチ、2025年1月16日にスナップショットを取り1月20日にTGEを予定している。トークン名は「$OBT」となっており、詳細は下記の通りとなる。
項目詳細
シンボル$OBT
チェーン・イーサリアム
・Arbitrum
・Base
総発行数100億$OBT
TGEエアドロ割当22%(22億$OBT)
VC割当10%(10億$OBT)
イーサリアムL2のzkSync Liteとは非zkEVMのzk-Rollupを採用したzkSyncのネットワークを指す。zkEVMを導入してイーサリアムのEVMと同様のコントラクト実行をすることができるzkSync Eraに対し、簡易版のzk-Rollupとして考えることができる。
zkSync Lite上のDEX
zkSync Liteは非zkEVMチェーンだが、ZigZagというレバレッジDEXが利用することができる。
zkSync LiteからzkSync Eraへのブリッジ
zkSync LiteとzkSync Eraは平行した別々のzk-Rollupとなっており、zkSync LiteからzkSync Eraへの直接のCross-Rollup(クロス・ロールアップ)のブリッジをすることは2023年6月現在できない。そのためOrbiter Finance(オービターファイナンス)やLayer Swap(レイヤースワップ)などの次世代Cross-Rollupブリッジプロジェクトを使用する必要がある。
イーサリアムL2のzkSync Eraとは世界初のzkEVMを導入したzkSyncのメインネットを指す。zkSync Eraは2023年3月28日にイーサリアムメインネット上にローンチしており、非zkEVMのzkSync Liteとは平行した別のイーサリアムL2ネットワークとなっている。
zkSync Eraはローンチ後にArbitrum(アービトラム)に次ぐトランザクション数を記録しており、zk-Rollupの中でも2023年6月時点で最も使用されているzkEVMとなっている。
イーサリアムzkEVMの「zkSync」とはコア技術にzk-Rollupを採用しているイーサリアムのL2(レイヤー2)ネットワークの1つを指す。zkSyncには2023年6月現在zkEVMを持たない”zkSync Lite(ジーケーシンク・ライト”とzkEVMを導入した”zkSync Era(ジーケーシンク・エラ)”の2つのネットワークが提供されている。
zkSyncの概要
zkSyncのプロジェクト概要は以下の表の通りとなる。
開発元Mater Labs
公式X(Twitter)@zksync
メインネットローンチ2023年3月28日
資金調達額4.58億ドル(698.22億円)
トークンシンボル$ZK
プロダクトZK Stack
種類zkEVM
コア技術zk-Rollup
創設年2018年
トークン配布方法エアドロップ
総発行数210億ZK
ガスETH
コントラクト(zkSync Era)0x5A7d6b2F92C77FAD6CCaBd7EE0624E64907Eaf3E
世界初のzkEVM
”zkSync Era”は2023年3月28日にイーサリアムメインネット上にローンチし、世界初のzkEVMを導入したzk-RollupのL2ネットワークとなっている。対してzkSync Lite上ではZigZagのようなパーペチュアルコントラクトを提供するレバレッジDEXなどを使用でき、StarkNetの提供する非zkEVMのStarkExに似たような位置づけとなっている。
zkSyncのトークン
zkSyncは2024年6月10日にZKトークンを発表し、6月15日にTGEを行った。エアドロップにおけるZKトークンの割当は1アカウント最大10万ZKとなっており、高額エアドロップとなったことで知られている。
*詳しくは仮想通貨(暗号資産)の「ZKトークン」を参照。
DeFiの対応状況
zkSync上ではゼロ知識証明の演算と互換性を持つEVMである”zkEVM”を独自開発しており、2024年12月現在レンディング最大手のAaveなどが既にzkSync上で利用することが可能となっている。またブリッジではほとんどのメジャークロスチェーンブリッジを使用することが可能であり、LayerZeroのStargateなどもEigenLayer($EIGEN)のLRTであるrsETHやweETHなどのブリッジが可能だ。
またスワップアグリゲーターのKyerberSwapや1inchもzkSync Era上で使用が可能となっており、AMMでは最大手であるUniswapの他にもPancakeswapやSushiswapといった主要DeFiを利用することができる。
zkSync上のDeFi一覧
zkSync Eraで利用できるメジャーDeFi/NFTの一覧は下記表となる。
プロジェクト名公式X(Twitter)DeFi分類トークンシンボル
Uniswap@UniswapAMM$UNI
PancakeSwap@PancakeSwapAMM$CAKE
SushiSwap@SushiSwapAMM$SUSHI
SyncSwap@SyncSwapAMMN/A
Aave@aaveレンディング$AAVE
Zerolend@zerolendxyzレンディング$ZERO
KyberSwap@KyberNetworkスワップアグリゲーター$KNC
1inch@1inchスワップアグリゲーター$1INCH
Rabby Swap@Rabby_ioスワップアグリゲーターN/A
Odos@odosprotocolスワップアグリゲーター
OpenOcean@OpenOceanGlobalスワップアグリゲーター
Circle@circleステーブルコイン$USDC
Tether@Tether_toステーブルコイン$USDT
MakerDAO(Sky)@SkyEcosystemステーブルコイン$MKR(SKY)
Satori@SatoriFinanceパーペチュアルDEXN/A
Lido Finance@LidoFinanceLST$stETH
Ether.fi@ether_fiLRT$weETH
KelpDAO@KelpDAOLRT$wrsETH
Element@ElementNFTマーケットプレイスN/A
zkSyncへのブリッジ方法
zkSyncへのブリッジ方法は主に下記が主流となっている。
プロジェクト名公式X(Twitter)DeFi分類トークンシンボル
Stargate@StargateFinanceブリッジ$STG
Orbiter Finance@Orbiter_FinanceブリッジN/A
LayerSwap@layerswapブリッジN/A
WooFi@_WOOFiブリッジ$WOO
Jumper@JumperExchangeブリッジアグリゲーターN/A
Bungee@BungeeExchangeブリッジアグリゲーターN/A
Interport@InterportFiブリッジアグリゲーター$IP
Symbiosis@symbiosis_fiブリッジアグリゲーター$SIS
イーサリアムのProto-DankshardingとはELのETH1エンジンで導入される新たなトランザクションフォーマットを実装する技術を指し、EIP-4844として知られている。イーサリアムの開発ロードマップでいう”The Surge(サージ)”に値する。
EIP-4844としてデンクン(Dencun)デンクンで実装
Proto-Dankshardingは2023年4月13日に行われた上海アップデートの次の大型実装となるデンクン(Dencun)で実装されることが決定しており、2023年後半から2024年前半にかけてイーサリアムに実装されると予想される。
Sharding実装への布石
Proto-Dankshardingはイーサリアムチェーンを分割し、並列でEVMによるコントラクト実行を可能とするSharding(シャーディング)とは異なる実装となっている。一方でProto-Dankshardingで実装する新たなトランザクションフォーマットのBlobs(ブロブ)はSharding実装のさら先のDASと後方互換を持つため、将来のイーサリアムの実装へ大きく貢献することにもなる非常に重要な実装となっている。
イーサリアムの事実上のスケーラビリティが増加
またProto-DankshardingにはRollup(ロールアップ)のL2ネットワークの拡張という利点の他にも、「Blobsによる事実上のブロック拡張」が行われるため従来のL2よりさらなるスケーリングが可能となるという大きな利点がある。ArbitrumのTVLの成長やzkSyncやStarkNet、ConsensysのzkEVMである”Linea”などが2023年にイーサリアムメインネットにローンチされることを考慮すると、イーサリアムのブロックはRollupに圧迫されているという現状がある。
そのためProto-DankshardingではRollupでのガス代削減効果の他、CALLDATAによるイーサリアムネットワークへの圧迫を避けることができる。
イーサリアムL2のzkEVMとはRollup(ロールアップ)の中でもzk-Rollupを採用したL2ネットワークで実装するイーサリアムL1のEVM互換を持つzk-Rollupネットワーク上のバーチャルマシン、またはzkEVMチェーン自体を指す。
世界初のzkEVMはzkSyncがローンチしたzkSync Eraであり、2023年3月28日にローンチした。
zkEVMの一覧
L2プロジェクト名公式X(Twitter)トークンシンボル資金調達額(円換算)
zkSync@zksync$ZK707.60億円
Linea@LineaBuild$LINEA1,004.23億円
Scroll@Scroll_ZKP$SCR124.37億円
Polygon zkEVM@0xPolygon$POL(MATIC)697.56億円
*プロジェクト別の資金調達額などのデータはこちら
zkEVMとは?
zkEVMはイーサリアムL1のEVMと同様にコントラクトを実行するバーチャルマシンで、zk-Rollupを採用しているL2ネットワークが利用するゼロ知識証明の演算と互換性を持つという特徴を持つ。
Optimistic RollupでのEVM実装は早い段階で行われたものの、ゼロ知識証明をベースとする複雑なzkEVMは2023年3月まで約2年遅れでのローンチに時間を有した。一方でzkEVMではOptimisitc Rollupが実現する500TPSというスケーラビリティを大きく超える2,000TPSを超えるスケーラビリティを持ち、将来的には20,000TPSを超えるとされている。
仮想通貨企業が破産時に申請しているチャプターイレブンとは、米国破産法における「再建」を目的とした破産手続きを指し、米連邦破産法11条のこと。英語ではCH11やChapter 11と表記されることもある。
チャプターイレブンの内容
チャプターイレブンはDIP(Debtor-in-Possession)として知られており、雇用を守りつつ債権者の資産を守る目的で申請が行われる。日本における民事再生に当たると表現されることも多いが、特徴として会社更生とも同様の特徴を持つため基本的にどちらにも属さない。
広く知られていることはチャプターイレブン申請後に原則120日以内に再建計画を提出するという点だが、再建には非常に複雑な手続きを有し、細かな手続きでも破産裁判所の認可が必要である一方、透明性が保たれるという利点を持つ。またチャプターイレブンの申請は債務者(経営陣)が申請する任意的申立(Voluntary Petition)が一般的だが、支払いを受けられていない債権者が申請する非任意的申立(Involuntary Petition)も資産を保全するために行われることがある。
仮想通貨企業のチャプターイレブン申請
2022年の仮想通貨暴落により多くの仮想通貨レンディング企業が連鎖倒産を起こし、チャプターイレブンを申請した。最大手のBlockFiなどもFTXのチャプターイレブン申請による連鎖倒産となっており、他にもセルシウスネットワークがDeFiでの巨額の損失により同様に申請を行っている。
他にはVoyager Digitalなどのレンディング企業が仮想通貨ヘッジファンドのThree Arrows Cpital=3ACの破産によってチャプターイレブン申請したことも知られている。他にもNasdaqに上場していたビットコインマイナーのCore Scientificや顧客資産の使い込みで流動性危機に陥った仮想通貨取引所のFTXなどもチャプターイレブンを申請している。
イーサリアムの”The Scourge”とはマージ(The Merge)後の5つの開発ロードマップの1つであった「The SplurgeからPBSを独立させた開発ロードマップ」を指す。2022年11月にVitalikによって提案されたMEV関連の開発となり、ブロック提案とトランザクションのピックアップを分離するためのPBS(プロポーザー/ビルダーセパレーション)が主な実装となる。
The Scourgeの分離によりThe SplurgeではVDFとAccount Abstractionがメインの実装予定となる。
イーサリアムの「The Splurge」とはマージ(The Merge)後の今後10年の開発ロードマップの1つで、イーサリアムのセキュリティと分散性を大幅に向上させる開発フェイズを指す。
The Splurgeの開発内容
The Splurgeでの主な実装予定はMEVや中央集権、リスクを避けることができるPBSやより完璧なRandomness Beaconを可能にするためのVDFの導入、EOAアカウントとコントラクトアカウントという分類をなくすAccount Abstractionなどになる。
PBSをThe Scourgeとして独立
2022年11月にイーサリアムの発明者であるVitalikは「PBSをThe Splurgeから独立するThe Scourge」を新たに発表。というのもPBSの他にもVDF、Account Abstractionともに非常に複雑な実装であるため、優先順位やそもそものロードマップの細分化が必要となるということを示す。
イーサリアムのMEV-Boostとはフロントランニング防止とBase Feeの高騰を抑制するための独自実装されたプロジェクト「Flashbots」が提供するイーサリアムバリデータ向けのツールを指す。
イーサリアムはMEV-Boostのブロックが9割
2022年11月現在、イーサリアムのブロック生成をマイナーの代わりにバリデータ(プロポーザー)が行うようになり、Beacon Chainに提案される約9割のブロックがMEV-Boostを介したブロックとなっている。MEV-Boostでは通常のブロック提案報酬でプロポーザーが得られるのはEIP-1559のPriority Feeだが、フロントランニングを防止するためのトランザクションでは巨額のETHが支払われることが多く、MEV-Boostでの高い収益性が期待できる。
イーサリアムに標準でPBSの実装提案
MEV-BoostはいわばPBS(プロポーザー/ビルダーセパレーション)であり、2022年11月にVitalikによってPBSを導入するためのイーサリアムの開発ロードマップ「The Scourge」が新たに提案された。
イーサリアムのRandomness Beaconとはイーサリアム2.0のBeacon Chainで得る乱数を生成するRANDAOのような「誰にも予想ができず、操作もできない乱数を定期的に生成するサービス」を指す。乱数の生成は一見平等に見えるが実は非常に複雑な問題を抱えており、この平等な”Randomness Beacon”をブロックチェーン上で実現するのは非常に難しい。
イーサリアムの開発ロードマップの一つであるThe SplurgeではRANDAOが提供しているRandomness BeaconをVDFを導入することでより分散されたセキュリティの高い乱数を得ることで、バリデータのコミッティ選出やShardingへのアサイン問題などを解決する。
イーサリアムのVDFとは”Verifiable Delay Function”の略でその名前の通り「検証可能な遅延関数」を指す。VDFは2018年10月に提案された関数の1つで、予想や操作ができない乱数を定期的に生成する「Randomness Beacon」などの使用に適している。
The SplurgeでVDFをイーサリアムに導入予定
イーサリアム2.0として新たなネットワーク開発ロードマップが考えられた2018~2019年にこのVDFを導入すると決定し、2022年11月現在では大きく変更されてThe Merge後の開発ロードマップであるThe SplurgeでVDFをイーサリアムBeacon Chainに導入する予定となっている。
SolanaはVDFを採用
VDFはSolana(ソラナ)が「Proof of History」を提供するために採用しており、イーサリアムではバリデータのコミッティのランダム選出などの公平性を出すための利用など、セキュリティを大幅に向上させるための重要な関数となっている。イーサリアムファンデーションはこのVDFを開発研究しており、専用のVDF-ASICを開発するとしている。
イーサリアムのプロポーザーとはThe Merge後にマイナーの代わりとなってブロックを生成するバリデータのことを指す。32ETHをステーキングしたバリデータはCasper FFGのコンセンサスに参加し、ブロックをBeacon Chainに提案したバリデータのことをプロポーザーと呼ぶ。
プロポーザーとアテスターの違い
アテステーションとしてファイナライズのための投票を行うバリデータはプロポーザーではなくアテスター(Attester)となり、プロポーザーはコミッティにランダムで選出される必要がある。
PBSで変わるプロポーザー
The Scourgeで実装される予定となっているPBS(プロポーザー/ビルダーセパレート)では、2022年11月現在のプロポーザーが行っているトランザクションのピックアップとそれらを取り込んだブロックをスロットに提案する一連の動作をプロポーザーとビルダーに別けることでMEVにおける弊害やフロントランニングの防止をイーサリアムプロトコル内で行う。
イーサリアムのPBSとは「プロポーザー/ビルダーセパレーション」の略で、つまりマージ(The Merge)後のバリデータによるブロック提案においてDeFiやNFT、送金などのトランザクションを取り込むためにピックアップを行うBuilder(ビルダー)とそのトランザクションをブロックに取り込んで実際にBeacon Chainに提案を行うプロポーザー(Proposer)を分離する実装のことを指す。
イーサリアムロードマップのThe Splurgeとして当初は提案
PBSはもともとThe Mergeを含めた5つのイーサリアム開発ロードマップの一つである”The Splurge”として提案されたセキュリティと分散性の向上を目的としたシステム。このPBSを一足はやく実装し、MEVとフロントランニング問題に対応したのがFlashbotsで、現在ではMEV-Boostとして知られている。
PBSは”The Scourge”として独立
The SplurgeはPBSだけでなくVDFやAccount Abstractionなどの複雑な実装のうちの一つとして提案されていたため、現在のMEV-Boostのドミナンスがイーサリアムネットワークの9割に達している現状から優先すべきアップデートとして「The Scourge」として新たにVitalikによって提案された。
イーサリアムにおける”CL”とはConsensus Layerの略であり、つまりPrysmやLighthouse、NimbusやTekuなどの”コンセンサスレイヤー”を指す。CLは別名”Beacon Chain(ビーコンチェーン)”とも呼ばれ、バリデータを管理するシステムチェーンであり、イーサリアムにおけるバリデータとノードのコンセンサスを担当するチェーン。
2022年9月15日に行われたイーサリアムのマージ(The Merge)移行はELとCLの2つでノードを構成するため32ETHをステーキングしているバリデータはELとCLの両方の同期を必要とする。
イーサリアムにおける”EL”とはExectuion Layerの略でつまりGethやBesu、ErigonやNethermindなどの”実行レイヤー”を指す。ELは別名”ETH1エンジン”とも呼ばれ、コントラクトの実行や送金を行うレイヤーのこと。
2022年9月15日に行われたイーサリアムのマージ(The Merge)移行はELとCLの2つでノードを構成するため32ETHをステーキングしているバリデータはELとCLの両方の同期を必要とする。
イーサリアム2.0の”Fee Recipient”とは、ETH1とETH2の2022年9月15日を予定しているマージ(The Merge)からバリデータクライアントに実装される機能で、マイナーが受け取っていた報酬をバリデータが受取ることができるようになる機能を指す。
The Merge後のバリデータ報酬
イーサリアムのマージが行われる前は、ブロックを生成したマイナーはEIP-1559のBase Feeを追加報酬として受取ることができた。一方で2022年9月15日予定のマージ後からはこのBase Feeをバリデータ報酬の一部として32ETHをステーキングしているバリデータが受取ることができるようになる。
マージ直後のFee Recipientはあくまでオプション設定となり、マイニングをしていたマイナーのようにデフォルトで受取ることができないため、Fee Recipientの設定が必要となる。
Fee Recipientを設定しない場合
もしバリデータがFee Recipientを設定しない場合、そのバリデータがブロック提案をしたときのBase Fee報酬は0x00アドレスへ送金されてバーン(償却)されることになるため注意が必要。
32ETHをローンチパッドを介して自己ノードでステーキングしているバリデータはThe Merge前に設定及びETH2クライアントのアップデートをしておく必要がある。
ETH2のFee Recipientを設定する方法
Fee Recipientの設定のやり方は墨汁マガジンVol.748「イーサリアム2.0のFee Recipientとは?マージ後にバリデータ報酬を受取るための設定方法」にて非エンジニア向けにわかりやすく解説しています。
https://bokujyuumai-salon.ethereum-japan.net/magazine/15893
イーサリアムのBase Feeとは大型アップデートの”ロンドン(London)”で実装されたEIP-1559による手数料方式で利用される基本となるイーサリアムの手数料を指す。
EIP-1559
EIP-1559ではイーサリアムネットワークの混雑具合で変動する基本手数料となる”Base Fee”と2022年8月マイナーに支払われる優先手数料である”Priority Fee”の2つの手数料を定義している。
この2つの手数料の合計が”Max Fee”となっており、Base FeeはEIP-1559によってバーン(償却)されるため、ETHの市場供給量が使われれば使われるほど減少していくという仕組み。
ロンドンアップデート前の手数料
ロンドンアップデートでEIP-1559が実装される前はビットコインと同じ”ブロックオークション性”を導入していた。だがこのブロックオークション性には欠陥があり、マイナーがスパムをして有利に釣り上げることや、MEVによる利益を享受するといった悪いインセンティブがあることからBase FeeをバーンするEIP-1559が実装された。
イーサリアム2.0としてShardingが実装されていくことで、EIP-1559の効果が高まり手数料が大幅に下がるように設計されている。
Base Feeはイーサリアムの重要指標
Base FeeはEIP-1559の仕組みから「イーサリアム自体の需要を示す重要な指標」である。
イーサリアムや仮想通貨(ブロックチェーン)におけるサプライチェーン攻撃とは、暗号によって堅牢にできているイーサリアム自体を狙った攻撃は事実上不可能であるため、イーサリアム上のエコシステム、例えばMetamaskやスマートフォン上のモバイルウォレットアプリを狙った攻撃を指す。
・イーサリアムにおけるサプライチェーン攻撃例
サプライチェーン攻撃は通常、企業などを狙うためにその企業のサプライチェーン(製造や配達などの一連の生産ルート)を狙ったものであるが、イーサリアムやブロックチェーンの場合はGithubのリポジトリを狙うものであるため異なる。イーサリアムを始めとするブロックチェーンは基本的にオープンソース開発、つまり開発されたコードが公開されているという特徴がある。サプライチェーン攻撃ではこのレポジトリに悪意のあるコードやマルウェアを仕込み、プロジェクトにマージ(統合)させることで大規模な攻撃を狙うというものだ。
・過去のサプライチェーン攻撃事例
過去にはUniswapのフォークであるSushiswapのMISOにおいて、2021年9月にサプライチェーン攻撃で865 ETHが盗まれたという事件が発生している。2022年8月3日に起きたSolana(ソラナ)の大規模ハッキングもこのサプライチェーン攻撃が理由であると見られる。
イーサリアムL2の「Optimsim」とはオフチェーンとオンチェーンのハイブリッドスケーリングソリューション”Optimistic Rollup”をコア技術として開発したL2ネットワーク、またはOP Stackを含むプロジェクト全体を指す。
Optimismの概要
Optimistic Rollupを採用し、イーサリアムのDeFiやNFTコントラクトをデプロイできるEVMを実装し、2021年1月に制限を設けたソフトローンチを行い、2021年12月にメインネットローンチを行った。OptimismはイーサリアムDeFiにおける最大手DEXのUniswapがメインネットローンチ後に利用すると事前に発表しており、Curve Financeなど最大手DeFiプロジェクトが対応している。
開発元OP Labs
公式X(Twitter)@Optimism
メインネットローンチ2021年12月16日
資金調達額2.675億ドル(408.30億円)
トークンシンボル$OP
関連プロダクトOP Stack
種類L2及びL2 Stack
コア技術Optimistic Rollup
創設年2019年
トークン配布方法エアドロップ
総発行数42.9億OP
ガスETH
コントラクト(Optimsim)0x4200000000000000000000000000000000000042
OPトークン
2022年4月27日、OptimismはイーサリアムL2として初となるガバナンストークン「OPトークン」の発行とエアドロップを発表した。2022年6月1日にOPトークンの正式なローンチを発表し、TGE時には一時14.2ドルを記録。
OPトークンはOptimismのガバナンスに使用されるトークンであり、将来的にはシーケンサーの分散にステーキングに使用されることなどが想定されるだろう。またOPトークンはOP Stackを採用したスーパーチェーン構想のガバナンストークンとなる。
L2構築ツール「OP Stack」
OptimismはOP Labsが開発したOP Chainを開発できる構築ツールとなる「OP Stack」を2022年10月に発表、2023年6月7日に実行された「Bedrock」アップデートにより正式にリリースした。
米コインベースは2023年2月23日にOP Stackを採用したBaseチェーンの開発を発表、仮想通貨取引所が提供する初のイーサリアムL2となり、2024年12月現在ではcbBTCやcbETHなどのコインベース発行のラップトークンなどを提供している。
*詳しくは「OP Stack」を参照
Optimism Supercainとは?
Optimismはチェーン名だったが2023年6月、Optimism Superchain構造に向けて「OP Mainnet」に名称を変更した。Optimism SuperchainとはOP Stackを使用したコインベースのBaseチェーン、ChatGPTで話題のOpenAI CEO、Sam Altman (サム・アルトマン)氏のWorldcoinのWLDを活用するWorld Chainなどを一括統合する構想であり、OP Stackチェーン間のシームレスなブリッジなどによる並列スケーリングネットワークを指す。
Optimismの競合プロジェクト
Optimismと同様のイーサリアムL2であり、L2構築ツールである「L2 Sack」を提供している競合プロジェクトは下記表の通りとなる。
L2プロジェクト名公式X(Twitter)コア技術資金調達額(円換算)シンボルL2 Stack
Arbitrum@arbitrumOptimistic Rollup188.76億円$ARBArbitrum Orbit
Optimism@OptimismOptimistic Rollup408.24億円$OPOP Stack
zkSync@zksynczkEVM698.97億円$ZKZK Stack
Starknet@StarknetCarioVM431.09億円$STRKStarknet Stack
イーサリアムのApproveとはDeFiやNFTを売買したり、流動性マイニングやステーキングする際に利用するコントラクトに送金許可を出す署名を指す。このApproveには2つの方法があり、
1.コントラクトを信用して無限に送金許可を行う
2.特定数量のみを許可し、売買のたびに許可を行う
とコントラクトによって変更をすることが可能。
1の無限に送金許可を行う場合、そのコントラクトをRevokeするまでApproveを再度する必要がない一方、セキュリティの懸念ともなるためコントラクトごとにApproveを正しく管理する必要がある。
イーサリアムのRevokeとはDeFiやNFTコントラクトなどのApproveの反対用語として使われており、コントラクトがApproveで送金許可を出していたものを取消しする署名を指す。ApproveをしなければDeFiや他のコントラクトでトークンやNFTを送金することができない一方、ハッキングの手法としてApproveが利用されることがあるため、使う頻度が高くないコントラクトやそもそも不明なトークンに対してApproveしてしまった場合に行う好意がRevokeとなる。
Revokeは正しくはApproveにおける送金許可数量を0に上書きすることである。
イーサリアム2.0のThe Surgeとは、今後イーサリアム2.0で行われる大型アップデートの名称を指し、The Merge後の大型アップデート”ポストMerge”となる。The Surgeの意味合いとしては”急上昇”を指し、Rollupを中心としたL2スケーリングへシフトするイーサリアムの急激なスケーラビリティ向上を目的としたアップデートとなる。
The SurgeではCALLDATAのガスプライスを改善するEIP-4488を中心としたアップデートとなっており、EIP-4488を実装した後に必要となってくる必要最低限のSharding実装の”Minimal Shard”やShardingを当初の予定の1048チェーン展開するためのProof of Cusodyの実装、ブロックデータの効率的なやり取りを行うDASなどが予定されている。つまりThe Surgeとは本来のイーサリアム2.0のロードマップであるフェイズ1~フェイズ2にかけての実装が行われるイーサリアムの大型アップデートということになる。
DeFiのアグリゲーターとはYearn FinanceやConvex Financeなどの別のコントラクトを仲介するDeFiプロジェクトを指す。アグリゲーターを介してコントラクトを利用することで、イーサリアムのガスの節約や、運用戦略、担保率の管理などのマニュアル操作では不利になる点でアドバンテージを得ることができる。アグリゲーターの種類としてはYearn FinanceのようなデポジットしたUSDCやETHなどを自動でイールドファーミング運用していくれる”イールドアグリゲーター”やConvex Financeのような”ブーストアグリゲーター”、1inchのような”DEXアグリゲーター”、”流動性マイニングアグリゲーター”など多くの種類が存在する。
2020年にYearn Financeがローンチしたことでアグリゲーターブームに火がつき、現在では”コントラクトを活用するコントラクト”というのが一般的となっており、流動性マイニングやイールドファーミングの利益を最大化するためになくてはならない存在となっていると言えるだろう。
DeFiのCVXとはConvex Financeのガバナンストークンを指す。CVXはConvex FinanceをCRVブーストアグリゲーターとして使用することでイールドファーミングすることができ、2021年9月16日からConvex FinanceがCurve FinanceでゲージのCRV加重投票の対象プールへの投票を行うことができるようになった。またSushiswapでCVX/ETHの流動性マイニングを行い、LPトークンをステーキングすることで別途イールドファーミングをすることができる。
DeFiのConvex FinanceとはステーブルコインAMMであるCurve Financeのガバナンストークン”CRV”のイールドファーミング報酬をブーストするCRVブーストアグリゲーターを指す。Convex Financeは2021年5月にローンチし、自分でCRVをロックして報酬をブーストする代わりにConvex Financeを介することでブースト効率を上げることができる。Convex FinanceではCurve FinanceのCRV報酬をブーストした報酬をファーミングできる他、ガバナンストークンである”CVX”をあわせてイールドファーミングすることができる。
イーサリアムにおけるEpochとは、特定のブロック数をまとめた一つの期間を指す。Epochは現行のイーサリアム1.0とイーサリアム2.0でブロック数が異なり、ETH1のEthashでは30000ブロックとなっておりDAGの計算期間となっている。対してETH2では32スロットを1つのEpochとし、Casper FFGのフォークチョイスルールによる投票でファイナリティを付与するという違いがある。
つまりイーサリアムにおけるEpochはコンセンサスルールごとに異なり、マイニングにおけるブロック期間とバリデータにおける投票のためのブロック期間という違いがある。
イーサリアム2.0のThe Mergeとは、現在DeFiやNFTが実際に動いているイーサリアムメインネットと32ETHをステーキングしてネットワークに参加しているバリデータを管理するイーサリアム2.0 Beacon Chainを統合するイベントを指す。The Mergeでは本来レガシーチェーンとして破棄される予定だったイーサリアム1.0通称ETH1を破棄せずeth1エンジンとして活用、Beacon Chainをコンセンサスレイヤーとして構成する新たなイーサリアム2.0の構造となっている。
The MergeはEIP-3675としてイーサリアムデベロッパーにより2021年7月から議論されており、同年10月15日から初となるパブリックテストネット”Pithos”がローンチされた。
2022年9月20日、イーサリアムは記念すべきマージをメインネットで完了し、マイニングは廃止されてイーサリアム独自のProof of StakeであるCasper FFGをコンセンサスアルゴリズムとしたイーサリアム2.0に移行した。今後の開発ロードマップではThe SurgeとThe Scourgeが優先するとみられる